「人前で話す不安を減らすには?|海外の大学でのプレゼンテーション授業からの考察」(話し方・あがり症克服 教養講座)


「発表が近づくと落ち着かない」「練習では話せるのに、人前では言葉が出ない」。プレゼンテーションへの不安から、話し方教室を探している方も多いことでしょう。

いくら準備をしていても、本番で話せるか心配になることはよくあることです。こうした悩みを考える手掛かりとして、海外の大学で行われたプレゼン授業の研究を今回はご紹介します。

1.海外の大学のプレゼン授業に学ぶ――VR・AIと発表不安(あがり症)の研究

香港の大学で行われた10週間のプレゼン実験

香港都会大学のVenus Chanは、2026年10月17日、学術誌『Virtual Reality』に研究を公表しました。香港の大学の英語プレゼン授業で、VR・AI・モバイル技術を統合した「XR MALL」を10週間使用し、対照群と比較した準実験です。

利用した学生には、発表不安の低下やプレゼン技能などの改善が報告されました。英語力に関する結果には自己評価も含まれます。

この研究は、練習する環境とフィードバックの組み合わせを考える材料になります。ただし、英語学習者への複合的な介入であり、AI単独の効果や、日本語で話す社会人への効果を示したものではありません。

「不安の大きさ」と「伝わったか」を分けて考える

この研究から日常の練習に応用するなら、本人が感じる緊張と、聞き手にどう伝わったかを分けて確認する方法が考えられます。

「声が震えたから失敗だ」と感じても、結論や提案は相手に届いているかもしれません。反対に、落ち着いて話せても、要点が曖昧な場合はあります。

練習後は「どの場面で不安を感じたか」と「何が伝わったか」を別々に振り返る必要がありそうです。緊張の有無だけで発表全体を評価することに意味はなく、改善する点を具体的に探すことが重要と言えるでしょう。

2.人前で話すための準備と練習方法――本番を想定して実践的に行う

聞き手・時間・会場を想定してリハーサル

原稿を読むだけでは、実際の発表に必要な動きを確かめられません。まずは、本番の条件を書き出してみることです。

例えば「初めて説明を聞く同僚5人に、会議室で3分間、改善案を提案する」と設定します。その条件に合わせ、立つ位置、資料を見せる順番、話し終える時間を確認します。

VRがなくても、椅子を聞き手の席に見立て、声に出して通す練習はできます。練習のたびに条件を増やす必要はありません。まずは時間内に要点を伝え、次に資料操作も加えるなど、確認したい課題を決めます。

原稿の表現修正に時間をかけるより構成に力点

練習を始める前に、聞き手に持ち帰ってほしい内容を一文にします。「何について話すか」に加え、「何を理解してほしいか」を明確にするのがポイントです。

例えば「問い合わせ対応の手順を統一したい」が結論なら、その理由と、現在起きている困りごとと続けます。最後に、協力してほしい行動を示します。

原稿の表現を整えることに時間を使い過ぎず、「結論・理由・具体例・提案」といった構成を練ることが肝心です。

3.プレゼン力を磨く――AIや聞き手からのフィードバック活用法

AIからフィードバックを受ける

日常の練習でAIを使うなら、「この発表を評価して」だけでなく、確認したい点を絞って依頼してみることです。たとえば、「初めて聞く人に分からない専門用語を挙げて」「結論が伝わりにくい部分を指摘して」「3分の発表として削れる重複を示して」などの尋ね方ができます。

ただし、AIの評価が正しいとは限りませんので、注意が必要です。提案された修正をそのまま鵜呑みにせず、自分の意図と合っているかを確認することです。会社の資料を使う場合は、社内ルールに従い、顧客情報や機密情報の入力にも注意しなければなりません。

人に聞いてもらいフィードバックを受ける

人に聞いてもらうときは、「どうでしたか」よりも、答えやすい質問を用意します。「提案の要点は何だと受け取りましたか」「説明が足りない部分はどこでしたか」と尋ねてみます。

本学・話し方教室の授業なら、単に印象についての感想だけではなく、説明の順序、論理、データが妥当かどうか、また、どう伝わったかを評価します。そうすることで、次の練習がやりやすくなります。

修正点の改善の際は、一度にすべてを直そうとせず、次は「冒頭で結論を述べる」など、一つの課題に取り組む方がうまくいきます。

話し方教室・専門家の視点/酒井学院長の一言

上記でご紹介した香港の大学での研究は、本番を意識した練習とフィードバックを組み合わせることで、いくらか”不安”が和らぐ可能性を示しています。ただし、技術を使えば、不安がなくなるという結果では、もちろんありません。

私から、皆さんに伝えたいことが一つあります。それは、プレゼンの聞き手にとって重要なことは、話し手が「緊張しなかったかどうか」ではなく、聞き手が必要としている「その情報を伝えてくれたかどうか」にある、ということです。

ですから、皆さんには、いつもその点を忘れないでプレゼンのレベルアップを図ってほしいと願っています。

日本コミュニケーション学院 創設者・学院総長 酒井美智雄

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