話し方教室「認知症・初期診断では、聞き取りやコミュニケーション問題にも注意を!」

脳の言語処理プロセスを調べることで初期の認知症診断ができる

カナダの脳機能研究機関であるベイクレスト健康科学ロットマン研究所などの研究者らは、脳の言語処理プロセスを調べることで初期の認知症の前兆を発見できることを明らかにした。

同研究は52~86歳の23人の高齢者を対象に実施。対象者を認知症診断検査の結果によって2グループに分け、映像を見ているときの脳幹の活動と、母音を聞き分けているときの聴覚野の活動を調べた。

その結果、認知症診断検査で正常の基準を下回ったグループでは、通常のコミュニケーションに顕著な問題を抱えていないにもかかわらず、脳幹や聴覚野の機能に異常を来していることがわかった。これらの脳の領域は言語処理をつかさどっているが、これまではアルツハイマー病に対して抵抗力があると考えられてきた。

しかし、今回の研究によって、会話の音声を意味のある言葉に変換する脳の処理に変化が起きていることが明らかになった。これは、その人がコミュニケーションに対する問題を認識する前に起こる、脳機能低下の最初の兆候となる可能性がある。

高齢者の認知症診断では、聞き取りやコミュニケーション問題にも注意を払うべき

また、脳幹と聴覚野の脳波を測定する方法は、アルツハイマー病に発展する可能性のある軽度認知障害を80%の精度で発見できることもわかった。高い費用対効果で客観的に高齢者を診断できる方法に発展することが期待される。

通常、初期の認知症は記憶と思考の問題と関係していると考えられてきた。しかし、高齢者は聞き取りやコミュニケーションの問題にも注意を払うべきだということが、同研究によって示唆されたことになる。

同研究は3月7日、「ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス」誌にてオンラインで発表された。

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