日本人にとって3月という月は、新しい年度をひかえた、一年の終わり・けじめの月と言えます。翌4月からは、新年度が始まるからです。

 学校は、小学校も大学も4月から始まります。官公庁も、1年は4月がスタートです。また多くの大企業では、4月の会計年度のスタートにあわせ、様々な業務システムが稼動し始めます。桜が咲く頃が新しい一年のスタート、これが多くの日本人に共通したイメージだといってよいでしょう。

 その桜の季節をひかえ、新たな気持ちで自分の「能力開発」に取り組もうとする方のために、今回は「社会人・職業人の能力開発とは、一体何か」について考えてみることにします。

 ところで我が校はご存じのように、社会人・職業人を対象に「コミュニケーション分野を中心とした能力開発サービスを提供する」専門スクールです。しかし、実際の指導領域は、コミュニケーション分野にとどまらず、ビジネスの広汎な領域に及んでいます。受講される方々の多くが、我が校に、そこまでのことを期待されているからにほかなりません。

 さて、「社会人・職業人の能力開発とは何か」。まず、「何に取り組んだらよいのか」、このあたりから始めたいと思います。

 もう何十年も前に、ロバート・カッツが、「階層別能力要件」を唱えています。その中に、コンセプチュアル・スキル、ヒューマン・スキル、テクニカル・スキルという概念が出てきますが、これが能力開発の参考になります。

 「コンセプチュアル・スキル」とは、将来計画設定技能と訳されていますが、私流に解釈すれば、これは思考・判断能力のことになります。

 「ヒューマン・スキル」とは、人間関係技能と訳されています。人とうまくやっていける能力です。リーダーシップを含みます。

 「テクニカル・スキル」は、技術的技能と訳されます。特定の業務をこなすために必要な、その特定業務についての専門能力だと思っていただければよいでしょう。

 実は、現在であっても、上記の3つが、社会人・職業人が開発しなければならない能力であることに何ら変わりはありません。

 さらに私は、その3大能力のほかに、それらを活かすための基盤とでもいうべき第4の能力が必要だとかねてから提唱しており、その第4の能力を「ビジネスベイシック・スキル」と命名しています。

 次号以降、これらの能力開発について、述べていくことにしましょう。
 では、新年度にお目にかかるまで、どうぞ、お元気でご活躍ください。

(C)酒井美智雄