厚労省の2002年労働者健康状況調査によると「仕事や職業生活での悩みベスト5」として、男性は、(1)会社の将来性、(2)仕事の量、(3)仕事の質、(4)職場の人間関係、(5)定年後や老後をあげています。一方、女性の悩みは、(1)職場の人間関係、(2)仕事の量、(3)仕事の質、(4)仕事への適性、(5)会社の将来性となっています。

 悩みの第1位は、男性の場合「会社の将来性」ですが、女性は「職場の人間関係」です。この違いは、太古からの男女の「役割」の違いがもたらしたものではないかと私は考えています。

 男の役割は、大昔から、家族を食べさせるために、獲物や食料をとりに「外」に出ることでした。これは基本的には今も同じで、男は家族を養うために、外(会社)に稼ぎに出ます。その男にとって「会社の将来性」が一番気になるのは、それがそのまま自分の獲物(稼ぎ)に直結するからです。これは、男の役割を考えれば当然のことと言えるでしょう。

 一方、女の役割は、大昔から「内」(住居)を中心とした隣近所までを生活の場として、その狭い社会の中で家事や子育てにいそしむことでした。(男の持ってきた食料で)食事の支度をしたり、子供の世話をしながら、外に出た男の帰りを待っていたのです。やはり、今でもさほど変わりはありません。

 ではなぜ、女性は「(会社や仕事のことよりも)人間関係を気にして、それに悩むのか」を考えてみることにしましょう。(実際、私の所へ、人間関係に悩み、その手助けを求めてお越しになる方は、やはり女性が中心です。)

 先述の通り、女性の生活の場は、大昔から住居を中心にその近所というきわめて狭い範囲に限定されていました。女性はその役割上、狭い社会の中で過ごさざるを得なかったのです。そうすると、いきおい家の中や隣近所の人々との付き合いが密になります。そしてその関係をうまく築いていくために気を遣わなければなりません。

 もし、関係がうまく維持できないようなら(男のように外に出ることはなかったわけですから)、その狭い社会の中に居続けることが大変困難になります。そうなれば、生活の基盤そのものを失い、もはや生きていくことができなかった、それが女性という存在だったのです。

 結局「女性が人間関係を気にする」のは、太古の昔から、狭い社会の中で生きていくためには、人間関係をうまく結ぶことが何よりも重大事であったから、だと私は考えています。そして現代にまで、それが女性の性質として残っているために、職業生活においてさえも「人間関係で悩む」という上記調査結果になったものと思えるのです。

(C)酒井美智雄