夏至もすぎ、梅雨明け、海開きも間近となりました。お元気でいらっしゃいますか?
 私がうまいものに目がなく、喰いしん坊なのは、もうバレバレだと思います。そこで今回は、飲食店の「うまさ」について考えてみましょうか。

 実は<うまさ>とは、味覚だけのものではなく、総合的なものだと最近感じています。
 料理だけがうまいのでは、どうも物足りない。店構えがいい雰囲気を醸しだしている、インテリアや置き物が統一感があっておしゃれ、お皿や料理の盛りつけがきれい、従業員の方が見ていて心地よいくらいにキビキビと動いている、こんなことを含めて「うまさ」が構成されているのではないかと思えるのです。

 今日は、素敵なおそば屋さんをご紹介します。私はそばも大好きで、うまい、こだわりのそば屋さんと聞けば、足を運ばずにはいられなくなります。幸い職場の近くにも、うまいそば屋さんを見つけました。

 このそば屋さんは伝統あるそば屋さんで、私が贔屓にする理由は、けしの実やよもぎなど、季節のそばを出してくれるから、それだけではありません。そばつゆがまた、おいしいのです。いつも、甘つゆと辛つゆの両方を出してくれます。そのどちらか一方だけでも、十分にうまいのですが、自分の好きな甘辛さに調合できるので、さらにおいしく思えます。

 そのそば屋さんで、最近こんなことがありました。英語を話す欧米の方とおぼしきご夫婦と、小学校低学年くらいの男の子2人、合計4人の外国人のご家族がひとつのテーブルでそばを食べていました。しばらくたって、男の子の一人がコップを床に落としてしまい、「パリ~ン」と、甲高い音が店内に響きわたったのです。

 私は従業員の方がどんな対応をするのか、興味をもって見守ることにしました。
 まず、ご夫婦の奥さんが、日本語で「ごめんなさい」と、申し訳なさそうに謝ります。それに応じて、男性の店員さん、笑顔で答えて曰く「いいえ、いいえ、グラスはいっぱいありますから、大丈夫ですよ~」。それを聞いた奥さんは、ほっとして、クスッと、笑っています。

 私はといえば、男性の店員さんを見ながら、「うん、うまいぞ、よくやった!」などと、一人ほくそ笑み、茶そばを頬張っておりました。おそばが心なしか、いつもより、さらに、おいしく思えた一日です。
 その一件から、結局「うまさ」とは、「料理の腕」だけではなく、「おもてなしの心と行為」、これらの総合的なものなのだと感じ入った次第です。

 もう一つお寿司屋さんのお話もしたいのですが、これは次回に。
 さあ、いよいよ夏の本番。暑くなります。くれぐれもご自愛くださいますよう。

酒 井 美 智 雄

2004年7月01日